護符にある「急急如律令」の呪文の意味とは?陰陽師は何故「きゅうきゅうにょりつりょう」と唱えた?

「急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」とは、日本では古くから、悪鬼を退散させる呪文とされ、道教や陰陽道だけではなく密教、修験道でも用いられてきました。特に護符に書かれることが多く、悪鬼退散の効果だけではなく、「願いを叶えるために動いてください」の意味でも用いられように変わってきました。

 

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急急如律令の意味

元々は、中国漢王朝の公式文書の末尾に用いられた決まり文句で「至急、律令(法律)の如くせよ」の意味でした。それが「御上の命令を守らなければ罰するよ」という意味になり、後に道教で悪鬼をはらうための呪文となり、日本に伝わったといわれています。

日本では静岡県指定史跡伊場遺跡。大溝南縁から出土した木簡に「急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」とかかれており、わが国最古の呪符といわれています。

 

参考文献

大漢和辞典(大修館書店)」には『 はやく律令の如くせよといふこと。もと、漢代の公文書の用語であるが、後に巫者の語となり、速に退散せよの義に用ひられる』とあり、

資暇録」では、『符呪のたぐいの末句であり、「急急たること律令のごと し」ということである。「令」の字は平声、読んで「零」となす。これは雷のそばにいる鬼で、
よく走り、雷とともにすみやかに疾走するところから出た』とあります。

「拾芥抄(しゅうがいしょう)」の諸頌部に「休息万命(くそくまんみょう) 急急如律令」と書かれいます。これは、昔、くしゃみをする(嚔ひる)と鼻から魂が抜け、数を重ねるほど寿命が縮むと信じられ、そうした凶事を防ごうと、この呪文を唱えました。

「拾芥抄」は一種の百科事典で、鎌倉中期に原型ができ、その後増補されていったもので、歳時・経史・風俗・年中行事などが記され、中世における公家の信仰・習俗・教養,諸制度などを知る基本的史料です。

武芸伝授書の文末にも、「教えに違うことなかれ」という意味で「急急如律令」と書かれているのが見受けられます。

 

伝統芸能のなかの急急如律令

歌舞伎

歌舞伎十八番「勧進帳」 の、富樫と弁慶とが間答をかわすところにも

富樫 そもそも九字の真言とは、如何なる義にや、事のついでに問い申さん。ササ、なんとなんと。

弁慶 九字は大事の神秘にして、語り難き事なれども、疑念の晴らさんその為に、説き聞かせ申すべし。それ九字真言といッぱ、所謂、臨兵闘者皆陳列在前(りんびょうとうしゃかいちんれつざいぜん)の九字なり。将(まさ)に切らんとする時は、正しく立って歯を叩く事三十六度。先ず右の大指を以て四縦(しじゅう)を書き、後に五横(ごおう)を書く。その時、急々如律令と呪する時は、あらゆる五陰鬼煩悩鬼(ごおんきぼうのうき)、まった悪鬼外道死霊生霊立所に亡ぶる事霜に熱湯(にえゆ)を注ぐが如く、実に元品の無明を切るの大利剣、莫耶(ばくや)が剣もなんぞ如かん。(武門に取って呪を切らば、敵に勝つ事疑なし。)まだこの外にも修験の道、疑いあらば、尋ねに応じて答え申さん。その徳、広大無量なり。肝にえりつけ、人にな語りそ、穴賢穴賢(あなかしこあなこあしこ)。大日本の神祇諸仏菩薩も照覧あれ。百拝稽首(ひゃっぱいけいしゅ)、かしこみかしこみ謹んで申すと云々、斯くの通り。

(地)感心してぞ見えにける。

富樫 ハハ斯く尊き客僧を、暫時も疑い申せしは、眼あって無きが如き我が不念、今よりそれがし勧進の施主につかん。ソレ番卒ども布施物持て。

 

雷神不動北山櫻」の四幕目「鳴神北山岩屋の場」で、
黒雲坊、白雲坊の二人が、師匠の鳴神に「そりゃあ何じゃ」といわれ、
二人声をそろえて「急急如律令」というと、
鳴神が「おおたわけめ」と返す。

 

浄瑠璃

浄近松門左衛門の浄瑠璃「女殺油地獄」中之巻、河内屋の段、勘当の場にも

おかち 「ああ、つらい、苦しい。」 と、もだえ身を震わせてうわごとを言う 父は驚いて顔色を変えるが法印はひるむ様子も見せず

法印 「そもそもおまえはどこから来た。早く去れ、去れ。行者の法力は尽きないぞ」 と、鈴と錫杖をちりりんがらがらと鳴らし

法印 急急如律令」 と、責めつける